2016年10月5日水曜日

第3セクション リッツェムークビックヨック その1

23日目
湖の対岸から始まるトレイルへ渡るボートの時間は6時50分と14時30分。朝食を食べてから出発することにしたので午前中はのんびり。チェックアウトを済ませた後はロビーを使わせてもらいました。買い物とお昼を食べてからボート乗り場へ。


ボート乗り場は特に待合所のような施設があるわけではなく、桟橋にボートが係留されているだけでした。気温が低く風も強い中、待ち続けること30分。雨がパラパラと降り出した頃、車で2人の船員が到着し準備を始めました。しばらくすると準備が終ったようなのでボートに乗り込みます。(特に呼ばれたりはしませんでした。)


このボートに乗ったのは我々だけでした。もやに包まれたグレーの湖の中をボートは進んでいきます。船員のおじさんによると「これからどんどん寒くなる。山の上ではもう雪も降り始めている」とのこと。北欧の夏は本当に短いんだなと感じるのでした。


対岸のAkkaに到着すると大勢の人がボートを待っていました。この週末でハイキングを終える人が多いようです。


ボート乗り場からAkka小屋までは2km。しっとり落ち着いた樹林帯を歩き始めます。日本のようしっかりしたシングルトラックはこの旅で初てかもしれません。ほどよく整備された歩きやすい道です。これまでだったら2kmは1時間かかりましたが、30分ほどで小屋に到着していましました。予定より全体の距離が短くなったこととこれまでは必死に歩きすぎたとの反省からこの日はここで終了。久しぶりに小屋のテント場で1泊。小雨の中で眠りにつきました。

24日目
夜中に何かに顔を踏まれたような気がしていました。朝起きてみると・・・うっかり放置してしまったパンにかじられた後が。ネズミが入ってきていました。以前、小屋で注意されていたのにやってしまいました。しかも、蚊帳も食い破られています。全く注意不足でした。反省。


 そんなこともあり、雨も降っていたので早めに撤収して小屋のキッチンで朝食を取ります。ガスが使えるのですが、どこをひねっても一向にガスが出る気配もなくがっかり。まぁ小屋の中で落ち着いて食事ができただけでも100クローネの価値があったということで。

そういえばAkka小屋のこの年のホストはファミリーで住んでいて男の子と女の子がとても可愛いのです。トイレには子供達が描いた絵が飾ってあったりして、アットホームな雰囲気です。ボートに近いため泊まる人は少なそうですが、 ここで1泊できてよかったと思いました。ホストファミリーはこの後雪が降ったらスキーを楽しんで帰ると話していました。(娘さんの帽子をトレイル上で見つけ届けたのがきっかけで少し話をしました。)


さて、パッキングを済ませて小雨降る中を歩き始めます。
歩きやすい道なのでスタスタと歩けてしまって困惑気味です。ほぼ道に迷うこともなく道標を探して歩くなんてこともなくなってしまいました。前後するハイカーも何組かいてなんだかほのぼのした雰囲気になってます。


橋だってしっかりしています。さすがにこの流れは渡渉できないから当たり前ではありますが。


先ほどの川を上から見下ろすと森の中を縫うように流れていました。のんびり歩けるのに絶景を見ることができるのが北欧のいいところです。


あまりに歩きやすくて今日の目的地のキスリス小屋に13時についてしまいました。まずホストを訪ね食料を買います。薄いパン4枚とバターで60クローネを購入しました。ちょっと、いや、だいぶ高いのですがいつもと違うものが食べたいという誘惑に勝てません。スパイスの効いた不思議な味のパンです。なんだかファンタジーの世界の食べ物のようでした。
雨がほとんど上がっていたので外のベンチで食べていたのですが、急に風が強くなってきて雨も強く降り始めたのでテーブルの下に避難して窮屈なランチになってしまいました。急いで食べて歩き始めたら雨は上がり青空まで出てきました。タイミングの悪いこと。


そこから気分よく歩いてトレイルから少し離れた小川の横で1泊することにしました。
低いところだったので風も避けられ快適な夜でした。

25日目


雲は多いながら良い天気です。風が強く気温は低くて1週間前の暑さが信じられないくらい。


ちょっと不思議な長い尾根のような地形の上を歩いていきます。視界が広く見渡せて爽やかな空気も相まって気分よく進んでいけました。


 高い山も近くにはなく川も中流域といった感じです。普通に歩いていても今までの1.5倍ぐらいは進んでしまうので心にも余裕が出てきました。


川沿いに歩いて行くと立派な橋があって北極圏トレイルとの合流地点でした。橋があるからというわけではありませんが、パジェランタレーデンはそこかしこで生活感を感じられる、日本の里山みたいなところです。街があるわけではないのになぜかホッとするようなゆるい空気が流れています。


 そんな川のほとりで昼食をとりました。


 目の前を通り過ぎていく大きな荷物のハイカー。この後、テン場を探して歩いていると必ずいいところに彼のAktoが張ってあったのです。彼のことは「アクトさん」と呼んでました。ゴールまで前後して歩いていました。

 時間にも心にも余裕が出てきたのでいい場所があったら時間に関係なくテントを張ろうということに。この日は湖を見下ろす高台で14時半頃に終了。
ちなみにアクトさんは14時頃にはテント張ってました。

2016年8月31日水曜日

リッツェムにて

リッツェムはパジェランタレーデンの北のスタート地点で規模は小さいものの大勢のハイカーが頼りにしている重要な宿泊施設です。
 宿泊はホステルとテント泊の2つ。ホステルは基本二人部屋で混雑時にはソファーをベッド代わりに使用して3人部屋となるようです。ホステルなのでシャワー、トイレは共同です。サウナもありますよ。もちろん、wi-fi完備。
食事の提供は朝食のビュッフェのみですが、共同キッチンには冷蔵庫、ガス台、電子レンジがあって売店で購入した食品を調理することが可能です。また、キッチン内にはFOOD BOXがあり余った食料を入れて誰かに譲ることもできます。ハイキングを続ける私たちはスープを4杯分いただきました。
売店はハイキング用の食料と消耗品の販売がメインです。この場で食べる冷凍食品とビールや暖かいコーヒーとクッキーもあります。

リッツェムでも2泊しました。到着した日はシャワーを浴びて洗濯して食事をしてビールを飲んで終了。ゲストが多いのでもう一人相部屋になるかもと言われていましたが乾燥室にベッドを入れて対処したらしく誰も来ませんでした。


滞在二日目。朝食はビュッフェ。と言っても、パンとシリアルとヨーグルトとオートミールとハムとチーズと少々の野菜。アビスコのゴージャスな感じを期待していると裏切られます。それでも食事を提供してもらえるというのはとても幸せなことです。ありがたや。

さてゼロデイ。やることと言ったらネットで進行状況の報告とニュースを確認することぐらいです。とはいえ、夏休み中の友達のハイキング報告やニュースなどを13日分読むのはボリュームもあり楽しい時間でした。
そこで1つ目に止まったと言いますか、興味深い記事を目にすることになります。
それが↓こちら
  
土屋智哉のウルトラライト・ハイキング2.0 「中央ハイトレイル」を行く#2

「彼でもこの記事のようにハイキングに悩むというか葛藤が生まれるような状況になることがあるのかぁ。」と、思ったのです。
というのも、私も「このハイキングは楽しいのか?」という疑問を持っていて、そのことに対して「そういうことを思ってはいけないのではないか」と思っていました。毎日のように楽しいかどうか考えながら歩いていました。
それが、「土屋さんでもこうなのだから自分がそう思うことがあってもいいんだ。」と思えることができて気分が楽になったのです。
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誤解のないように書いておきますが、北極圏を歩いた日々は確実に「楽しい」でした。
歩いている時点では「楽しい」 のかどうかモヤモヤしていたのですが自分が感じていたことを的確に表現している人を後日TRAILSの記事で発見しました。
↓こちらの深町さんの記事

Pacific Crest Trail #02/女性ハイカーが見たPCT

そう、この記事に書いてあるようにハイキング中に感じていたことは「Fun」ではなく「Interesting」でした。深町さんと全く同じことを感じて歩いていたわけではないのですが、間違いなく「この先はどうなっているだろうか?」「どんなことが起こるのだろうか?」という興味を持って進んでいました。そうやって最後まで歩いた結果、「このハイキングは楽しかった。」と感じられたのだと思います。
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そして、この時考えたことがもう1つ。
もとより北極圏トレイルの途中からハイキングは始まっているのですが、途中からグレンスレーデンに入ったことによって「北極圏トレイルのスルーハイク」ではなくなってしまいました。その判断は間違っていなかったし予定を変えたことも面白いことの1つで良い選択だと思っています。ただ、「北極圏トレイルもクングスレーデンもグレンスレーデンもどこも通しで歩いていないじゃないか」と。どこか中途半端に感じたのです。始点から終点まで全部歩いて「私はここを全部歩きました。」と言いたい。スパッと切れ味よく行きたい!
そこで、北極圏トレイルを歩き続けることはやめて、この先のパジェランタレーデンをスルーハイクしようと決めました。
 リッツムから湖を渡るボートの行き先は2ヶ所。Akkatsuganとvaisaluoktaで前者はパジェランタレーデンで後者は北極圏トレイルへと続きます。その先は2つのトレイルが交錯して重なったり離れたり。ゴールは同じでkvikkjokk(クビックヨック)です。最後が同じなら中途半端に北極圏トレイルを歩くのではなくてパジェランタレーデンの約140kmを最初から最後まで歩くのがキリよくて気持ちよいと感じたのです。
そして急いでこの先の情報を調べます。
・小屋は有人で食料は買い足しながら進めそうなこと。
・トレイルの最後は湿地で歩ける状態ではないので最後はボート乗る。1日1便。
・途中、サーミ人が運営する小屋では生のトラウトが購入できる。
などなど。わかる範囲で情報を集め明日の出発に備えました。

そして気持ちも軽くなりとりあえずビールで乾杯。&就寝。

2016年8月26日金曜日

第2セクション アビスコーリッツェム その5

21日目
歩き始めてすぐに雨が降ってきました。風も次第に強くなってきています。
トレイルは山頂を目指す登り坂です。奥さんのペースが上がらず、何度も振り返ります。調子が悪いわけではなかったようですが、久しぶりの悪天候でとても心配してしまいました。それより早く進んで終わらせたかったらしいです。
昼過ぎには補給地のリッツェムに到着する予定だったので途中の避難小屋で早めのお昼と取ることにしました。体も冷えているのでとっておきのチキンラーメンを食べる奥様。体も温まって少し機嫌も良くなった様子でなにより。
「キノコー!」「ウ○コー!」と叫んで距離と元気なことをお互い知らせ合いながら進んでいきます。毎日一緒に歩いていると頻繁に話をすることもなく休憩の時に少し話をするぐらいなことが多いです。
どこだかよく分からない山頂を過ぎたころに雨は上がり虹を見ることができました。先ほどまでの不安な気持ちはどこへやら。気持ちも軽く最後の下りを歩いて行きます。
山の斜面をトラバースするようにトレイルは続きます。徐々に高度は下がっていき、そろそろ見えてもいいはずなのになかなか見えてきません。お昼を食べてから2時間経ったでしょうか。台地状の広い森の中の細かなアップダウンを何度も越えてようやく第2セクションのゴールであるリッツェムが現れました。

 最後の下りを歩いていると軽装のハイカーがトレイルの脇でベリーを採取していました。街が近いことを実感し挨拶をしてすれ違いました。それから程なくしてゲートが現れ第2セクションが終了。無事到着したことに胸をなでおろしました。
リッツェムの宿泊施設はコテージといった大きさでコンパクトにまとまっています。ホテル形式での宿泊はないようで受付でホステルを朝食つきで申し込みをしました。受付をしている最中にふと共同キッチンを見ると先ほどの軽装ハイカーがベリーをヨーグルトに入れて食べていました。なるほどね。部屋に移動しシャワーを浴びてサッパリしたらビールで乾杯です。お疲れ様した!

 おまけの話
部屋で鏡を見ると、とても痩せていました。脂肪だけでなく筋肉もなくなってます。歩くことってあまり筋肉使わないようです。足だけ太いということもなく。今回のハイキングは痩せるということだけなら期間的にも費用的にも「デーッデーッ!」ってところと同じ効果があるようです。ロングディスタンスハイキングダイエット(LDHD)が流行るかも?

2016年8月24日水曜日

第2セクション アビスコーリッツェム その4

18日目
歩き始めて間もなくトレイルは湖に挟まれた細い地峡のような場所に向かって行きました。

地図ではその先が繋がっているのかどうか読み取ることができません。これはもしかしたら例の場所なのではと期待に胸を膨らませて進んでいきます。
その一番細い場所は
対岸へは繋がっておらず1艇のボートが置いてありました。
これです!これ!
ついにこのハイキング一番のお楽しみポイント到達することができました!
ここはボートを漕いで渡り、対岸のボートを牽引して引き返してボート元に戻し、また1艇だけで渡り直します。必ず両側1艇ずつになるように調整してから進むのです。面倒といえば面倒なのですが、それを楽しみにここまで歩いてきました。ついに体験することができます。
上の写真は2艇で戻ったところです。1艇を陸に引き上げてから渡り直します。
オールもボートも重くて1日分の力を使ってしまいました。それで楽しい経験ができたことでその後も楽しく歩くことができました。

何度かトナカイ柵と川を越え国境も越えるとラップランドでは珍しい水深のある緩やかな流れに出ました。小さいながらも魚影が見えたので久しぶりに竿を出してみます。警戒心のない小魚の前にフライを落とすと即座に反応がありました。合わせてみるとスポーンと引き抜けて手元に来る前にオートリリース。まぁ、つまりはうまくフックさせることができません。3回ぐらいバラしたところで諦めました。残念。結局、このハイキングを通して魚を釣り上げることはありませんでした。

ボートを漕いだり、釣りをしたりでいつもと違う1日になりました。気分転換ができて良い日でした。

19日目
久しぶりに雲が多めで気温の下がった日でした。午前中は蚊に追われて進むうちに時間が過ぎて行きます。お昼近くになりさらに攻撃を強める蚊から逃げるように登った峠の上には素敵な風景が広がっていて思わず足を止めました。
峠には小さい池があり、水面に雪が浮かんでいて少しずつ溶けていく様子が見られました。白い雪が水の中で青く深い色に染まっていきます。これが山の上の風景だということがとても神秘的で見とれてしまいました。
 とても幸せな風景だったのでこれを眺めながらお昼を食べることにしました。
食べるものはいつものアルファ米ですが、今日のはいつもより美味しい気がします。
ついでに記念撮影。
お遍路さんではありません。もう少しこざっぱりした見た目にできるといいのですけどね、何ぶんおじさんなもので。すいませんです。

食事を済ませ、いつもより多めに休憩をとって出発しました。ここからほぼ下りです。距離の目標となる小屋を通り過ぎて鋭角に曲がったら国境を越えてスウェーデンへ入りました。ここでノルウェーとはお別れです。この先は最後までスウェーデンです。
そして、途中から北極圏トレイルとも一旦お別れすることにしました。これはアビスコで下調べをして進行状況で判断しようということにしていたことです。ここまでで10日かかっています。このまま北極圏トレイルを進むと5日以上かかりそうです。そうなると体力的にも食料的にも厳しそうです。ルートも面倒で大きな湖を回り込むように歩き船で戻るように補給地のリッツェムに渡り、再度船で進まなくてはなりません。なんだか無駄が多いような気がします。
そこで大きな湖の手前で北極圏トレイルから離れてリッツェムまでショートカットすることにしました。そこはグレンスレーデンという有名ではないルートなのですが、新しく整備された道だそうなので問題はなさそうです。リッツェムまでの距離はおよそ60kmなので3日で到着の予定です。

小屋からなだらかな下りをひたすら歩いてそろそろ分岐点だというところまで来ているのに一向に道標が見えません。何度GPSで確認してもほぼ間違いないのに発見できません。
それは窪地に隠れるように立っているのですから上からでは発見できないはずです。しかし、表示は消えていないのでクングスレーデンと北極圏トレイルの分岐よりはマシだったのかもしれません。
ということで、 無事にグレンスレーデンに入ることができました。
グレンスレーデンのマークは4色でとても分りやすく比較的穏やかな地形で視界も広く歩きやすいトレイルです。
 このルートに小屋は1か所しかありませんが途中に風除けの休憩所があります。食事の時は助かりました。
そして、奥さん念願のベリーの群生がありました。ビルベリーとクラウドベリーがあちらこちらに。蚊が多い中で夢中で採取していました。奥さんもこのハイキングでの目標を達成したようです。

20日目
ベリーを見つけては「わかさ生活」 と言ってきてうるさい。(しかもモノマネ)
 上機嫌でベリーを摘みながら歩いているのでそっとしておくことにしました。
私も適度に摘んで食べながら歩きます。乾燥したものばかり食べているのですっぱさがとても美味しく良い刺激になりました。
トレイルはゆっくりと高度を下げて行き大きな湖のほとりに出ました。 そこには立派な吊り橋が…なんかおかしいです。どうやってもその吊り橋に乗ることができなさそうです。よく観察してみると、どうやら湖が増水してトレイルが水没しています。吊り橋自体は水の上にあるのですが、そこに至る階段までは水の中なのです。これは困りました。水深は1mぐらいありそうです。しかも、湖への流れ込みにあるので水の中に入るという選択肢はなさそうです。仕方がないので脇の斜面から吊り橋を吊っているワイヤーを頼りに橋の上まで移動することにしました。
1mほどの幅の左右のワイヤーに足を置き足元から腰までつり上がっていくワイヤーを手で掴み慎重に歩を進めます。このハイキング中一番怖かった場面でした。ヨタヨタしつつもどうにか渡りきり、次は奥さんの番。彼女はこういうことは怖くないらしく余裕の表情で歩き始めます。問題なさそうと思った矢先、半分ぐらいのところで足を滑らせてバランスを崩す奥さん!見てるこっちは心臓止まるかという思いだったのに「テヘッ」みたいな顔をしています。困ったものです。どうにか無事に二人とも渡りきりまして一番の難所を通過しました。
水没さえしていなければこんなに立派な吊り橋で安全そうなんです。渡りきると焚き火跡があって開封していないビールが置いてありました。「お疲れ様」ってことなんでしょうかね?手をつけませんでしたけど。
この後もトレイルが湖の縁を通るたびに浸水していて道なき道を迂回することになり疲労困憊でした。
木が生えているところはなかなかいいテント場がないので仕方なく平そうな高台で就寝です。

2016年8月21日日曜日

第2セクション アビスコーリッツェム その3

15日目。
日数的にも距離的にもおよそ半分なこの日。
地図を見ると国境と湖の中を縫うように歩くルートになっていてワクワクが止まりません。

暑い中、30分歩くと小屋に到着しました。犬を2匹連れてドイツから来ているという家族と軽く会話をし先を急ぎます。急登を上りきると川があってお約束の渡渉です。靴を脱がないで渡れるところを探して進んでいると後ろから長身の男が追いついてきました。彼は長い手足を使って岩の上をスイスイと渡り始めます。しかし、途中で立ち止まりました。そこは彼の膝上ぐらいの水深の場所です。彼も靴を脱ぎたくはないようでした。その上流に私の足の長さでも渡り切れるイントを発見していたので「こっちの方が楽に渡れるよ。」と身振り手振りで伝えます。彼はにこやかな顔でこちらに向かってきて、「サンキュー」と一言。その先はザブザブと水の中を歩いて行きました。
彼曰く
「私のはロングブーツでどこでも歩いていけるよ」
とのことで、足を見ると膝下まであるスーパーハイカットブーツでした。 ザブザブと川に入っていくのも当然です。水深が膝上まであったのは計算外のようでしたが。
 しばらく彼と前後してその後何度かあった渡渉のときは彼からアドバイスをもらったりしました。しかし歩幅の差は大きくて徐々に離され見えなくなりました。

この日は無風で湖は鏡のように風景を映し出していました。上下対象の不思議な世界。非現実的な世界に見とれてしまいます。地図で確認するとこの後は湖が密集してくる地域なのでさらに素敵な風景に出会えるのではないかという予感がしました。
  岩の上で昼食を済ませ湖に下るとトレイルはダムの上を通っていました。石を積んで堰き止めているようです。特に何の施設もなく使用目的はよく分かりませんでした。この柵も何もないダムの上を歩くというのは何だか不思議な気分です。何だかちょっと悪いことをしているような感じがしないでもなく。いや、特に問題のない場所で普通に通行可能なんですけどね。

ダムの先は未舗装の車道になっていて車が何台か停まっていました。ノルウェー人がデイキャンプを楽しんでいます。挨拶をすると「どこへ行くの?」ときかれ地図を見せて説明してもピンとこない様子。行き先がスウェーデンなのであまり知らないのかも知れません。話のついでにそこの網の上に余っているソーセージやそのクーラーボックスの中にあるであろうコーラをご馳走してもらえたらハッピーなハイキングになりそうですが、現実はそんなに甘くはなく。笑顔でお別れしました。その後に続く車道の上り坂がやけに足に堪えました。


ひと山超えた次の湖のほとりには目標の小屋(Skoaddejavre)がありました。そこにはもうかなり先を歩いているだろうと思っていたロングブーツ氏がいて小屋泊のノルウェー人と話をしていました。
「私たちはゆっくり歩いてきました。あなたは歩くのが速いですね。」
と奥さん。
「私は足が長いからね。ははは」
と、ロングブーツ氏。彼はいつも楽しそうです。
それから先週(アビスコに到着する前まで)はラップランド全域で天気は悪く、今週来週は良い天気が続くという話を聞きました。ここまで天気が良くて暑いのはそうあるわけではないようです。先週と今週の間ぐらいの天気がお望みなのですが、そうもいきませんかそうですか。

しばしの談笑の後、今日の寝床を探して30分ほど進み湖が見渡せる場所でこの日は終了になしました。

16日目
話の通りいい天気が続いています。
朝から大きな岩というか岩盤がむき出しになっているというかダイナミックな地形の上を歩きました。。
岩盤の上に無数の石がある不思議な光景が広がっています。 同じようでいて毎日違う風景の中を歩けて飽きることがありません。

しばらく軽いアップダウンを繰り返し最後に車道に向かって激坂を下りました。写真ではなだらかに見えますが、岩場の急斜面でなかなかすんなりとはいきません。岩と下りが苦手な奥さんは四苦八苦。
急斜面な上に岩も1つ1つが大きくて目印に沿って進むのにも苦労しました。
 やっとの思いで下りきるとそこにはキャンピングカーがあって子供達が遊んでいます。先ほどまでの緊張感はなんだったのか?というぐらいのどかな雰囲気でした。

そこからは10km以上の長い長い車道歩きです。昔の歌謡曲やドラマの話をしながらのんびり進みます。それでも道を探さず歩けるというのは楽なものであまり苦にならずに歩ききることができました。途中でオコジョっぽい動物に遭遇したりもして気分転換になったのも良かったのかもしれません。鳥とネズミとトナカイ以外は見ないもので刺激になりました。

車道の終わりの小屋から湖を回りこんで少し登ったところで奥さんが「蛍の光」を口ずさんだのでこの日は終了となりました。

17日目
見晴らしのいいところまで移動してから朝食を食べました。朝起きたてそのまま食事だと何かとダラダラしてしまうのでサッと撤収して少し動いて体を目覚めさせて眺めのいいところで食べた方が色々と気持ちが良いです。
これまでと違う行動をとりうまく気分も盛り上がって山を登ると、とんでもなく素晴らしい景色が待っていました。

「なんだこれは?」
山と湖がハーフパイプ状の空間を作り、それが数キロ先まで続いていっています。鏡のような水面にその不思議な空間が丸ごと反転コピーされていてさらに幻想的な風景を作り出していました。ここはとにかく最高の景色でした。ちょっとパリパリチョコアイスっぽいし。(空腹感)

さらに山を一つ回り込むとまた別の湖の気持ちの良い風景が現れました。
 今回は偶然にも進行方向と時間が一番素敵な組み合わせになったようです。坂を登って視界が開けるとそこに湖が広がるようになっていましたし、遅い時間だと風が出て湖面が揺れて綺麗に写りこまないようでした。
なんだか幸せです。風景を見て幸せになれるというのが登山やハイキングの魅力なんだなと実感できる1日でした。

そういえば、この日は人に会いませんでした。